2010年3月29日月曜日

安楽病棟 by 帚木蓬生


老人が暮らす痴呆病棟が舞台。
前半は入院患者の履歴、現状が事細かに描かれている。
お地蔵さんの前垂れを縫い続ける女性、深夜、引き出しに排尿する男性、異食症で五百円玉が腸に入ったままの女性、自分を23歳の独身だと思い込む女性、などなど。
この病棟で一人また一人と患者が亡くなっていく。
年齢が年齢なだけに、亡くなっても不自然ではないのだが・・・。
疑問をもったのは看護師の城野。
彼女はいつも明るく、真に患者を思いやり尽くしている看護師。
呆けてもなお生き続けるのが幸せなのか、安楽死した方が幸せなのか。
終末医療の現状と問題点が描かれている。

ミステリーとして読むと、それほど面白くない。
でもノンフィクション的な部分で、痴呆とはどんなものなのか、その一部を垣間見ることができる。
痴呆老人・・・なんだかとっても切ない。
生き続けるのが幸せか、安楽死した方が幸せか、今の私には判断できない。

重い作品。

『オランダでは医療行為に安楽死が取り込まれている』
というのは本当のことらしい。

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