2010年3月1日月曜日

金のゆりかご by 北川歩実


『金のゆりかご』とは、天才を作り出すベッド。
赤ちゃんのときに脳に刺激を与え、脳の構造を適切にデザインすることで天才が作り出せると考えられている。

主人公・野上雄貴はGCS早期幼児教育センターで教育を受け、幼い頃は天才ともてはやされたが、今は凡才、タクシードライバーをしている。
そんな野上の元に破格の高給でGCSへの就職話が転がり込む。
GCS創始者の近松吾郎は『天才』に偏執する男、凡才となった野上に用はないはずなのだが・・・。

9年前、GCS受講生の4人の子供(基樹、秀人、守、梓)が神経に異常をきたす事件が発生した。
金のゆりかごが原因なのか?
この事件を隠蔽するために近松は子供の入れ替えをしたのか?
一卵性双生児の一方には天才教育をし、もう一方には何もしなかったらどうなるのか?
天才を育てるために凡才を犠牲にしていいのか?

「君は天才だ。君は他のものより優れている。」
と言われ続けて育った子は、マトモな大人になれるのか。
常に周りの者を見下し、人間としては最低ということになりはしないか。
一生天才のままでいられればまだいい。
途中で伸び悩み、凡才となった暁には自分自身の存在価値をどこに見出すのか。
他人を恨むことで、それを消化しようとしないか。

『早期教育』と『天才と凡才の人間としての価値』が主たるテーマ(そこに心臓移植の問題も少々)。
強欲、非情、残虐、非道・・・。
人間の醜い部分をこれでもかってくらい描いている。

ラストで急に話の展開が速くなり、二転三転のどんでん返し。
「いったい悪いのは誰なんだ?!」
と怒鳴りたくなる頃・・・怒涛の終焉。
篤志(守の双子の弟)、君は狂っている!

母親を階段から突き落とした秀人はどうなったのか???
分からないまま終わってしまった。
結局、もともと神経の細い子だったという理解でいいのかなぁ。

他にも気になること多数。
面白かったけど、ちょっと消化不良気味の終わり方かな。

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