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2010年4月19日月曜日

重力ピエロ by 伊坂幸太郎


兄・泉水、弟・春、どちらの名前も英語にするとスプリング、2人は最強の兄弟。
2人の兄弟と優しい父と美しい母の4人は最強の家族。
そんな家族には重力のようにのしかかる辛い過去があった。

そんな家族の周辺で連続放火事件が起きる。
放火場所を予告するかのようなグラフィティアート。
グラフィティーアートに書かれた文字と遺伝子ルールの奇妙な関係。
そして過去の忌まわしい事件との関係。
・・・反省して欲しい・・・ただそれだけだったのに。

両親の言葉・・・
ふわりふわりと飛ぶピエロに、重力なんて関係ない。
重力は消えるんだ。
楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる。

春の言葉・・・
まっすぐに生きていこうと思えば、どこかで折れてしまう。
かと言って、曲がれ曲がれ、と思っていると本当に曲がる。


どうにもならない宿命とういうのは切な過ぎる。
重力(宿命)なんて消えてしまえばいいのに。

2010年3月30日火曜日

水の眠り 灰の夢 by 桐野夏生


主人公・村野はトップ屋。
トップ屋とは、週刊誌のトップになるようなニュースを探り出し、雑誌社に売り込むことを仕事としている人。
時は東京オリンピック直前の昭和38年。
村野は偶然、地下鉄で爆弾事件に巻き込まれ、連続爆弾魔・草加次郎事件を追い始める。
その最中、甥の卓也を迎えに行った葉山の坂出邸で女子高生・タキと出会う。
タキを家まで送り届けた際、タキに対する父親の暴力を目の当たりにした村野は、タキを自宅に泊める。
そして、タキはいなくなり、隅田川に浮かんだ。

連続爆弾魔は誰か?タキを殺した犯人は誰か?

少女たちに蔓延する睡眠薬と麻薬、売春。
偏執的な家族愛。
こうゆうの昔からあったのね。

村野の孤高と心意気がすごくいい。
この時代の雑誌社の在りようが興味深かった。

2010年3月1日月曜日

金のゆりかご by 北川歩実


『金のゆりかご』とは、天才を作り出すベッド。
赤ちゃんのときに脳に刺激を与え、脳の構造を適切にデザインすることで天才が作り出せると考えられている。

主人公・野上雄貴はGCS早期幼児教育センターで教育を受け、幼い頃は天才ともてはやされたが、今は凡才、タクシードライバーをしている。
そんな野上の元に破格の高給でGCSへの就職話が転がり込む。
GCS創始者の近松吾郎は『天才』に偏執する男、凡才となった野上に用はないはずなのだが・・・。

9年前、GCS受講生の4人の子供(基樹、秀人、守、梓)が神経に異常をきたす事件が発生した。
金のゆりかごが原因なのか?
この事件を隠蔽するために近松は子供の入れ替えをしたのか?
一卵性双生児の一方には天才教育をし、もう一方には何もしなかったらどうなるのか?
天才を育てるために凡才を犠牲にしていいのか?

「君は天才だ。君は他のものより優れている。」
と言われ続けて育った子は、マトモな大人になれるのか。
常に周りの者を見下し、人間としては最低ということになりはしないか。
一生天才のままでいられればまだいい。
途中で伸び悩み、凡才となった暁には自分自身の存在価値をどこに見出すのか。
他人を恨むことで、それを消化しようとしないか。

『早期教育』と『天才と凡才の人間としての価値』が主たるテーマ(そこに心臓移植の問題も少々)。
強欲、非情、残虐、非道・・・。
人間の醜い部分をこれでもかってくらい描いている。

ラストで急に話の展開が速くなり、二転三転のどんでん返し。
「いったい悪いのは誰なんだ?!」
と怒鳴りたくなる頃・・・怒涛の終焉。
篤志(守の双子の弟)、君は狂っている!

母親を階段から突き落とした秀人はどうなったのか???
分からないまま終わってしまった。
結局、もともと神経の細い子だったという理解でいいのかなぁ。

他にも気になること多数。
面白かったけど、ちょっと消化不良気味の終わり方かな。

2010年2月24日水曜日

チルドレン by 伊坂幸太郎


この本は5編の短編小説で構成されている。
 
《バンク》
大学生の陣内、鴨居と盲目の長瀬との出会いの物語。
偶然にも銀行強盗の人質となった3人。
14人の人質は何度かに分けて全員が開放され・・・そして銀行内には誰もいなくなった。
犯人さえも!



《チルドレン》
家裁調査官になった陣内とその後輩の武藤の物語。
ある日、武藤は万引犯の高校生とその父親の面接をした。
この親子関係には何か問題がある。
その問題とは何か?
後日、この少年は誘拐され・・・。

《レトリバー》
失恋した陣内と長瀬、長瀬の恋人・優子の物語。
舞台は仙台駅前。
陣内は、
  「失恋した俺のために、今、この場所は時間が止まっている。」
と言い出す。
恐喝、張り込み、少女売春を絡めた作品。

《チルドレンⅡ》
家裁調査官の陣内が試験観察中の少年・明。
彼は自分の父親のことを『いつもペコペコ頭を下げているダサいヤツ』と思っている。
陣内は彼なりのやり方で、そんな親子関係に『奇跡』を起こす。

《イン》
クマの着包みを着てバイト中の陣内の物語。
この短編の中で、陣内がいかにして自分の父親との関係を割り切ったかが明らかにされる。

伊坂幸太郎の小説には痛快な人物が登場する。
この本に登場する陣内という男も・・・
  理屈にならない理屈で人を困らせる
  『立ち向かうこと』が基本方針
  逆さ吊りにしたら「失礼」と「無遠慮」が出てくる
  根拠の無い断定をする
  根拠の無い出鱈目な話をする
  奇人変人の常識知らず
  世の中の面倒なことを跳び越している
  思い立ったら誰に予告することもなく、すぐさま行動する
  何でもかんでも勝手に断定し、それが誤っていても間違いを認めない
  意味不明で出鱈目な主張をする
  自分の発言に責任を持たない
  面倒くさがり
  妙なたとえ話で相手を煙に巻く
  陣内に太鼓判を押されると余計に不安になる
  陣内が「絶対」というたびに絶対の価値は下落する
・・・と言った具合。

直情怪行、メチャクチャだ。
遠巻きに見ている分には面白いが、身近にいたら迷惑この上ない。
でもカッコいい!
真似したくなるけど、真似をしたら痛い目にあうだろうなぁ。

2010年2月17日水曜日

植物図鑑 by 有川浩


ある日、道端に落ちていた彼(イツキ)。
  「お嬢さん、
   よかったら俺を拾ってくれませんか?

   咬みません。
   躾のできた、よい子です。」
の言葉で、さやかとイツキの同居生活が始まる。

さやかが知っているのは『イツキ』という名前だけ。

さやかはそれで充分だった。
でも、そんな生活がいつまでも続くはずもなく…。


イツキは野草オタク、さかやは野草オンチ。
イツキはさやかに野草の名前、その料理方法を伝えていく。


  『雑草という名の草はない。
   すべての草には名前があります。
   by 昭和天皇』

  『別れる男に花の名を一つは教えていきなさい。
   花は毎年必ず咲きます。
   by 川端康成』

本の中に登場するフレーズ。
印象的だった。

途中、野草と料理の話で冗長感があるものの、後半1/3はウルウル涙もの。
ほのぼの、ホロッとする甘~いラブストーリー。

有川浩は恋愛小説の名手です。

2010年2月4日木曜日

神様のカルテ by 夏川草介


栗原一止は本庄病院(24時間365日対応)に勤務する内科医。
夏目漱石の『草枕』をこよなく愛するはゆえ、話しぶりは古風。
酔うとボロッと言ってはいけない本音を漏らす。
口が悪くて、身だしなみも適当で、変なしゃべり方でなんだか難しいことばばっかり使って何を言っているのかわからないことがたくさんあるけれど、患者さんのことだけはとても真剣に考えている。
さらに、山岳写真家の妻・ハル(榛名)を愛している。
優しい優しい心をもつお医者さん。
でも感情表現が下手で無骨な感じ。

安曇おばあちゃんの手紙・・・泣けた。
  『病の人にとって、もっとも辛いことは孤独であることです。
   先生はその孤独を取り除いてくださいました。
   たとえ病気は治らなくても、生きていること楽しいと
   思えることがたくさんあるのだと教えてくださいました。
   ・・・・・・・
   先生のおかげでこんなにも楽しい時間を過ごせました。』

作品中に散りばめられたウィットとユーモア。
選りすぐられた言葉。
この人の文章は大好き!

とっても心温まる話なんだけど、ちと盛り上がりにかけるかも。